こんにちは!塾長の坂根です。
今回は、中学校で習った知識で高校物理基礎の問題を解説していきます。中学校までの理科はできたけど、高校生になったら理科科目がわからなくなったという人が多いです。もちろん高校の方が内容は難しくなりますが、中学校の知識で解ける問題も多くあります。逆に、実は中学校の知識で解ける問題なのに、問題文や状況を複雑にして難しくする問題が物理基礎には多いです。なので、実際の問題を解きながら理解していきましょう。
問題① 仕事の原理
ではさっそく問題を見てみましょう。下の問題を解いてみてください。
よく見る滑車を使った問題ですね。
物理が難しく感じる理由の一つとして、公式や解答の選択肢がアルファベットやギリシャ文字になっているので、何を表しているのかわからないことです。しかし、基本的には中学校までで習った公式をアルファベットにしているだけなので、ここでは可能性な限り中学校の公式を使って解説します。
まずこの問題の単元は「仕事」です。仕事は「J(ジュール)」と表すことができ、仕事の求め方は
仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離
です。実際に図で表すとこんな感じです。
100gの物体にはたらく重力は1N(ニュートン)なので、2kgであれば20Nの重力が働いています。よって引き上げる力も20Nとなります。そして、手がした仕事(J)は公式にあてはめると
仕事=20N×3m=60J
となります。ではこの知識を上の問題にあてはめてみます。
まず、重力は高校物理ではよく「mg」と表記されます。N(ニュートン)と同じだと思ってください。mは質量(kg)・gは重力加速度(9.8m/s2乗)です。上の問題に重力を落とし込んだ図は、
これだとわかりづらいので、簡単な数字をあてはめてみましょう。
この問題のように、天井と手の2か所で支えている滑車の場合、片方ずつ力が分散されるので、天井が支える力と手が支える力はそれぞれ物体に働く力の半分(10N)になります。さらにその上に滑車があるので、さらにその半分の5Nずつ分散され、引き上げる力は最終的に5Nとなります。
ということは、上の問題で人が引き上げる力は物体に働く力の1/4となるため、答えは④1/4mgです。この原理を使って、大昔の人々は重いものを持ち上げていたようですよ。
問2の仕事の表し方は公式にあてはめるだけなので、
Mg×h=Mgh(①)
となります。
問題② 摩擦力のする仕事
次の問題は「摩擦力」の問題です。摩擦力とは運動を妨げる力のことで、運動の向きとは逆に働きます。これはイメージがつきやすいですね。では問題を見てみましょう。
物理は数学を解くのに似ています。数学の問題を解くときも求めたい値を、何の公式にあてはめれば出るのか逆算して考えます。そこから、その公式に必要な値を解くには他の公式に…というような感じです。物理も求めたい値の公式からどんどん逆算して考えていきます。
求めたい値は「距離」なので、距離を使う公式は問題①でも出てきた「仕事」の公式です。
仕事(W)=F(N)×距離
ということは、 F(N)つまり重力 の値が必要ですね。重力は「mg」なので、
M(質量㎏)×g(9.8)=1000×9.8N
と表すことができます。この値は下の図のように垂直抗力(重力の逆方向)と一致する(ベクトルの向きが逆)ので、
垂直抗力(N)= 1000×9.8N
と表すことができます。
また、動摩擦力(滑っている物体に働く摩擦力)の大きさの求め方は、
f=μ(動摩擦係数)×N(垂直抗力)
なので、問題文の動摩擦係数0.5より、
f=0.5×N=(0.5×1000×9.8)N
ここで、動摩擦力がした仕事は運動エネルギー(1/2×m(質量kg)×速度の2乗)の変化に等しい(下図)ので、
運動エネルギーの変化=変化後-変化前=1/2m×速さ0の2乗-1/2m×速さ14の2乗
=1/2×1000×0-(1/2×1000×14の2乗)= -(1/2×1000×14の2乗 )
となります。よって、 動摩擦力がした仕事 = 運動エネルギーの変化 より、
-(1/2×1000×14の2乗 ) = -(0.5×1000×9.8)N ×距離d(摩擦の向きが反対方向なのでマイナス)
これを解くと、距離d=20(③)となります。
まとめ
いかがでしょうか。かなり嚙み砕いて説明したつもりです。というより、私自身がこれぐらいかみ砕かないと理解できなかったので、図を多用してみました。前回もお話しした通り、私は高校物理を習っていませんから、中学校の理科の知識をフル活用しないと高校物理の問題がわからないんです。こんな物理を習っていない人間でも何とかなるもんですから、あきらめずに物理の勉強をしましょう!